プロ野球を社会科する/第4回

奥さん、奥から出ておいで。

〜古田・中井夫婦の選択的夫婦別姓〜


古田クンと結婚して、中井さんはどうするのかと思っていたのですが、家庭に引っ込んだりせず変わりなくやってるみたい。平成教育委員会にもちゃんと出勤してるし、姓も中井のままでやってます。戸籍上どうかは知りませんが、事実上は夫婦別姓状態です。
有名人夫婦って、日本の家庭に多大なる影響を与えるとぼくは思っています。普通人は芸能人夫婦の家庭をのぞいて、私もこんな風にしようと決意したり、今の若い人ってこうなのねと納得したりする。
例えば最近、披露宴をしない芸能人の結婚が何組かありましたが、あれに救われた新婚さんってけっこういたと推測してます。ぼくは披露宴廃止論者ではないけど、本人がやりたくないのにやることはないわけでしょ。でもそんな場合、親だの親戚だの会社だのが無理矢理やれと言うわけで、どこか不自由なシステムだと感じてました。「披露宴をしない芸能人が続けざまにいたこと」は、親や親戚や会社の無理矢理披露宴やれ攻勢を「そういう時代なんですなあ」と幾分やわらげたと思うんですよ。
で、そういう影響力を持つ有名人夫婦の中でも、野球選手の奥さん像は地味でした。と言うより、ぜんぜん表に出てこない。ダンナは選手で有名人だけど奥さんたちは一般人なんだから当たり前、って言われりゃそれまでですが。でも野球選手の奥さんと言えば「黙って耐える良妻賢母」をイメージしてしまうなあ。
そんなイメージをバリバリバリッとすごい音で最初に破ったのが、野村監督の奥さんでした。彼女の登場で、ラク〜な気持ちになれた管理職夫人の皆さんも多いでしょう。「主人の立場もあるし、しおらしくしていなきゃ」と思い込んでた奥さんたちを「なんだ、自分らしくふるまおうっと」と解放してくれたかも。
それに続いて、今度は若い奥さんたちをラクな気持ちにしてくれそうなのが中井さんです。プロ野球ニュースのキャスターをやめるときも涙ひとつこぼさなかった彼女は、古典的奥さん像を演じることからみんなを解放してくれる気がします。夫の古田クンもそんな彼女に古クサいこと言いそうにないし、この二人は新しい野球選手夫婦像をぼくたちに見せてくれそうです。
「選択的夫婦別姓」の法律的な実現に、某政党のおじいさんたちが「家庭崩壊につながる」なんつって反対してるらしいですが、大きなお世話ですよね。同姓だろうが別姓だろうが壊れるものは壊れる、続くものは続く。大事なのは自分の考えで選ぶ自由があるかないか。家庭のことまで政府や会社にとやかく言われたくないっ。夫婦別姓にしたい人はすればいいし、披露宴やりたくない人はしなきゃいい。
そんな風に日本の家庭のイメージが揺れ動く中、古田・中井夫妻の今後は楽しみです。女性の皆さんも、そういう目で今年のヤクルトを見ていくと、野球の新しい楽しみ方が発見できるかもしれませんよ。


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