さていよいよ、予告した映画企画募集である。
まずはっきりさせておくけど、この募集はあくまで遊び、余興、冗談半分。いい企画が見つかったからって映画化するあてもないし、もちろん賞金も出ない。東京在住の人だったらぼくが焼肉をおごるくらいのことはできるけどさ。
ただ、まあ、ぼくも映画のポスター制作の仕事を何度もしているから、映画界に親しい人はそこそこいる。だから万にひとつくらいならひょっとしないでもないかも。なーんてことはでも、全く期待しないでね。
だから遊び半分でこんなの映画にしたらどうかなあ、というのを募集して、だったらもっとこうしたら?とかこりゃ映画にしたらヒットまちがいなしじゃん、とか空想するのが目的。空想するだけとは言え、そこは「日本映画をぶっこわせ」ならではの視点で語り合いたいとは思うけどさ。
さて、ところでここで募集したいのは「映画企画」であって「映画脚本」ではないところに注意。ここで言う企画とはまあ、プロットというかストーリーというか、大まかなもの。
ストーリーってのはさ。
ハリウッド映画だとクレジットに「Story by」と「Screenplay by」と二通りあるケースがよくある。和訳すると「原案」と「脚色」てなことかしら。邦画の場合「原案」ってクレジットがある場合は少なく、「企画」というのがよくある。でも邦画の「企画」ってプロデューサーにクレジットされそこなった人の受け皿みたいに使われるから定義は曖昧みたいなの。
ハリウッドの「Story」と「Screenplay」のちがいもどこまで明確かは不明。セリフやト書きまで書いた人が「Screenplay」だとは言えるだろうけど、「Story」は何をどこまでやった人なのかしら。ただ、ハリウッド映画は前にもシナリオの段階でもみまくるってことを書いたけど、その現れがこの二つのクレジットなのかもしれない。
さて、じゃあ、「企画」を応募するという場合、何をどこまで書けばいいのかという問題があるけど、そこはまあとりあえずは「適当です」ということではじめましょう。とにかく大まかな設定や話を文章化してメールで送ってください。
例えば、「ダイハード」だったら「テロリストのビル乗っ取り現場にたまたま居合わせた刑事が孤立無援のまま大活躍する」てなことになる。これも書きようで、「妻としっくりいかない刑事。妻の働く日系企業が新しく建てたビルのパーティにやって来る。ところがそのビルをテロリスト達が乗っ取った。人質を免れた刑事は孤軍奮闘でひとりずつテロリストを撃破していく。また、ビルの外にいるヒラ警官ともうまく連絡をとりつつ。だが途中で、功名心にあせるニュースキャスターの浅はかさから、人質の中に彼の妻がいることが敵に知れてしまう。果たして彼は妻と他の人質の命を守りながら敵を殲滅できるだろうか」てな書き方でもいいよね。
「シックスセンス」だとどうかな。(観てない人はネタバレするから以下は読み飛ばせ)
カンタンに書けば「心を病んだ少年を治そうとする精神科医。少年の悩みはなんと、幽霊が見えてしまうことだった。それが本当だと気づいた精神科医はその克服法を少年に与えることに成功する。だが実は、精神科医自身も自分が幽霊だったことに気づく」
うーん、カンタンに書いちゃうと衝撃のラストがあまり衝撃じゃないなあ。もっと詳しく書いてみよう。「美しい妻と暮らす精神科医。彼の専門は子供の心の治療だった。だがある日、子供の頃彼に診てもらったという青年が治療の失敗を恨んで彼を撃ってしまう。その翌年、彼は今度こそ完全な治療を施そうと、ある少年を診ることにする。母と二人暮らしの少年は、他人には理解できない言動で周囲を悩ませる。最初は精神科医を疎んじていた少年も徐々に心を開き、ある時、自分の悩みは幽霊が見えてしまうことだと告白する。もちろん、精神科医はそれこそ心の病のせいだと信じない。彼は、少年の悩みの異常さに加えて、妻との生活がうまくいってないことで悩み、少年に治療の断念を告げる。だが、精神科医を撃った青年の子供の頃の録音を聞くうち、背後に死人のつぶやきを発見する。青年も同じ悩みを持っていたのだ!考えた精神科医は、少年に幽霊の訴えを聞いてやれとアドバイスする。少年はそのおかげで悩みを克服し、母親とも心から理解しあう。成果に満足する精神科医。そこで彼は、自分自身も幽霊だったことに気づく。青年に撃たれた時にもう死んでいたのだ!妻とはうまくいってなかったのではなく、彼女には彼が見えていなかったのだ。少年だけが彼を見ることができるからこそ、話ができたのだ。彼が幽霊だからこそ、少年は信頼したのだ。治療の失敗がこの世への心残りだった彼は、これで天国に行くことだろう」
うわ、長い。でも「シックスセンス」の企画としての面白さを理解するには、これくらい書かないとね。
「マルコビッチの穴」だとカンタンですむ。「うだつのあがらない青年が、なんとか就職したビルに不思議な穴を発見する。入ってみたら、それはなんと、個性派俳優ジョン・マルコビッチに15分間だけなれる穴だった」
もちろん、そんな二つの文章ですむ映画じゃないけど、企画としての面白さはこれでとりあえず十分でしょ。
というわけで、やっぱり「適当です」の範疇で好きに書いてみてください。とにかく「こんな映画は面白いと思う!」の「こんな」を一行の文章でもA4一枚くらいの文章でも、これなら「こんな」が伝わる、と思える書き方で書いて送って。送り先はもちろん、ぼくのメールアドレス。あらためて書いておくと
だからね。おまちがいなく。
送ったらあとはどうなるか?さあね、ぼくにもわかんない。まあ、いきあたりばったりで進めてみまーす。
(2000年10月24日)