前回「週刊化宣言を守るよ宣言」をしてからはや一週間。ここで更新しないと誰にも信じてもらえなくなるので、がんばって書きまーす。
今回から少し、映画産業のシステム上の話をしましょう。とくに、前に「日本映画は変わりそう」と意味深に書いたので、それにからめつつ。
で、「産業としての映画の研究」のために前々から行こうと思っていたシネコンでついに映画を観たの。お目当ては「東映アニメフェア」。4歳の息子がテレビで「ワンピース」にはまっていて、どうしても見たいというので家族サービスの一環としてね。
実は先週、一度行ったのです。新百合ヶ丘ワーナーマイカルへ。初回が9時半なので、8時に出るつもりが、ぼくが寝坊して9時に出た。10時に着けば次の11時40分の回は大丈夫だろうと思ったんだけど、甘かった。売り切れ。じゃあその次の14時の回を見るかどうか、妻としばし協議した末、やっぱ今日見ようと決心したら、タッチの差で14時も売り切れ。しかもアニメフェアは子供シフトで上映はそこでおしまいだったのね。息子に「パパが早く起きないからだよ」となじられた。父の信頼失墜。
そこで今日は、ちゃんと8時に家を出て9時15分頃着いたんだけど、先週の10倍くらい混んでた。もうすごいんだぜ。待合スペースにどあーっと人がごった返している。6つくらいあるチケット窓口には長蛇の列。たどり着くまで30分かかった。そりゃまあね、小学校休みの日だし、ひと足早くはじまった「東映アニメフェア」に続いて「ドラえもん」「ウルトラマン」「トイストーリー2」などの春休み映画が出そろったし。
案の定、「アニメフェア」は9時半も11時40分も売り切れ。「ウルトラマンは?トイストーリーじゃダメ?」と息子に代案を提示しても「ワンピースが見たいの!」と言われると先週の失点があるので抗弁できず、14時の回を購入。いったんエレベーターを降りたあと、「14時まで何するんじゃい。別の映画でも見るか」と再度並んで「トイストーリー2」も購入。ドタバタとウェンディーズで食事した後、二本立て続けに見た。効率いいような悪いような。
さて、シネコンの感想なんだけど、まずシステムとして効率いいような悪いような。いや、効率いいんだけど、もっとよくできるでしょう、と思った。
まず、一箇所で何種類も上映しているのはいいね。息子が「ワンピース」に意固地になってさえいなければ、別の映画にシフトできたわけでね(結局それもしたわけだけど)。映画人口を底上げする。人気いまいちな映画にもチャンスはめぐってきやすいね。客としても、お目当ての映画を待ってでも見るかどうか選択権あるわけでね。思わぬ拾い物の佳作に巡り合ったりするかもしれず、映画ファンを増やしてくれそうな装置だ。
我が家は結局二本見たわけだけど、同じ日に二本見ると、二本目は料金割引がある。半額くらい。これも一箇所でたくさん上映するからできるわけだね。だったら一日にまとめて見ちゃおうかなんて考える人も多いだろうから、料金面でも映画ファンを増やす仕組みが出来ている。
それと、チケットを買う時に上映回を指定し、客席の数だけ売る、席がなくなったら売り切れ、となる。これもわかりやすいね。チケットが買えたからには絶対に立ち見にはならない。激しく売り切れになる映画ならちょっと前に行って並んだほうがいいけど、そうでもないかぎり上映時間に間に合えばいいわけで、それまで落ち着いていられる。
ただ、どうせ客席の数しか売らないのなら、買う時に座席指定をさせてほしい。実際、「トイストーリー2」「ウルトラマン」「ドラえもん」は全席指定という売り方だったの。だから「トイストーリー2」は上映時間まで落ち着いて過ごせた。でも「東映アニメフェア」はなぜか自由席のみだったの。4歳児の上に1歳の赤ん坊まで引き連れてる身としては、高くてもいいから指定席にして並ばずにすましたかったのにさ。「トイストーリー」が終わった後すぐさま「東映アニメフェア」に並んだんだけど、列の頭の方では寝転がっちゃってる子供までいた。はしたないけど、子供だから許してやってほしいし、彼らがそんなことしないですむようにしてあげてほしい。それほどまでして見たい、ありがたい子たちなんだからさ。子供が殺到する映画は全席指定。ワーナーマイカルは全国的にそうすべし。マイカルがやらないならそういう法律を制定してくれ。とまでぼくは言いたいね。
それと、少なくとも新百合ヶ丘のワーナーマイカルはロビーにゆとりがない。今日は一日中家族連れでごったがえしていたし、とくに赤ん坊をかかえたファミリーにはごったがえす空間で長時間過ごすのは大変なのよ。ロビーがもっと広くていいと思ったし、座れる場所が少ない。うまくベンチを配置して、待ち時間を少しでも快適に過ごせるように考えてほしいもんだ。
まあでも、今日は春休み映画初日というウルトラスーパースペシャルな日だったからってことが大きい。普通の土日ならここまでごったがえすこともそうそうないだろう。基本的には、シネコンはいい環境だと思う。だいたい、川崎市麻生区近辺の人々は、これまでは映画を観ようと思うと電車で繁華街まで行かなきゃならなかったわけでね。こういう、ベッドタウンにどかーんとつくっちゃうのがシネコンの構造改革的発想で、またできたらできたでちゃんと集客できることを示してくれた。発想を転換すれば市場は開拓できる、という、いま日本のあらゆる産業で起きていることの典型的な現象だ。
日本映画が変わりつつある。その文脈の中でシネコンをとらえると、上に書いたような「観客を増やすんだね」という効果になってくる。それはそうなの。まず、そうなの。でも、それだけじゃないんだ。そして、「観客を増やす」ことよりひょっとしたら大きな効果をシネコンはもたらそうとしている。
あと10年くらいしたら日本中がシネコンだらけになってそうすると映画人口が増加する。そしてまた一方で起こりそうな現象、傾向。映画製作の中身にも関わってきそうなことがあるんだけど、それはまた来週ってことで。早く言えよって?だって今日は早起きしたから眠いんだもん。
(2000年3月11日)