更新をさぼっていたら、いろんな人から「週刊化はどうしたんすか」と問われた。二年ぶりくらいで会った人にまで。意外に見てくれてるんだね、このWebって。すんません。週刊化はもう忘れてください。そのかわり、この数日で二つ三つ更新しますんで。
15分だけ他人になれる。しかもジョン・マルコビッチに。という妙ちきりんなアイデアで勝負する「マルコビッチの穴」。実名で登場する俳優マルコビッチになってしまう穴を、あるビルに見つけた男とその妻、そして謎めいた美女の三人が不可思議な人間関係を繰り広げる。
この映画、ぼくの評価は低い。はっきり言って消化不良だと思う。とくに「マキシン」の行動原理の不明瞭さは全体をわかりにくくする。不明瞭というより、キャラクターが未完成なままだと言った方がいいだろう。いくつか参加している映画のメーリングリストではけっこうみんなほめてた。こういう映画を安直にほめて映画ファンぶってちゃいけないよ。いかにも通に受けそうなアイデアだけど、そのアイデア以外に何もないじゃないか。アイデア以外に何かつけようとして失敗してるというか、ね。
ただし、このいかにも通に受けそうなアイデアってのも大事だね。実はこの映画、数カ月前に存在を知った時は、ミニシアター系で公開する映画だと決めつけていた。ところが、意外なことにメジャー配給の全国ロードショー。キャメロン・ディアスが出演することを考慮しても、およそメジャー向きの映画だとは思えなかったんだけど、フタを開けてみれば都内ではボックスチャート2位だってさ。
これはいかにも通に受けそうなアイデアが意外にハデだったということかな。だってあのジョン・マルコビッチのはげ頭がいっぱい出てきて、あなたも15分間彼になれるってのは、インパクトあるよね。名前もね。ジョン・リスゴウとかジョン・マクビーとかじゃだめだよね。マルコビッチ。ビッチがいいよね。知らなくても、興味わくよな。
「15分だけ他人になれる」。どこか映画というものの根源にも関わるようなこの企画は、考えてみれば誰が思いついてもおかしくないようなアイデアじゃないかなあ。そしてその対象がジョン・マルコビッチであることで異様なパワーを持った。ここ数回「映画っぽい」について考えてきたわけだけど、それはとどのつまり、シンプルなアイデアなんだと言える。○○○が×××だと△△△で・・・そりゃ映画にしたら面白そうじゃないか!それがアイデア。そのアイデアが映画っぽいかどうかが、映画の面白さに関わるってわけ。
テロリストがビルを占拠したらたまたま刑事が居合わせておりまして=ダイハード。バスに爆弾が仕掛けられて時速80kmをきると爆発するそうです=スピード。救世主を産む女性を殺しに未来から不屈の殺し屋がやってきます=ターミネイター。もちろん、それを誰が演じるかとかその映像をSFXで表現できるかどうかなどもからみあってくるけど、基本的にはまず「アイデア」がある。
さあ、そういう話の流れで、前に予告した仮想映画企画募集をやってみようと思う。あなたにだってアイデアはひねり出せるはず。ひねり出すだけならあなたの自由だ。そいでもって、それは面白そうだねとか、そんなんじゃダメでしょうとか言うのも自由。
どういう形式でやるかは、次回を待て。いや、まだ、考えてないんだよね。なはは。
(2000年10月1日)